ナツマツリ


思案するように視線を宙に漂わせ、チラリ、と。俺を窺い見たナツ。


しかし覚悟を決めたらしく、ぼそりと言葉を吐き出した。


「佳奈が、さ。味見したいから沢山ケーキ作って、って聞かなかったんだよ。」

「……まじか。」

「まじです。」


顔を見合わせ、二人で思わず笑みをこぼした。


テーブルの上には、湯気を立ち上らせている出来立てのシチュー。


数ヶ月前までは閑散としていたこの部屋も、ナツが居るだけで温かみに溢れているから不思議だ。



-END-

( cooking )


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