ナツマツリ
ぬっ、と。音もなくテーブルの傍らに現れたその人。
胸元に付けられているプレートに目を向ければ、"店長"と記されていた。
「カレンさんが食して下さったのは一度きり、ですけれど。味付けも当時のまま変えていませんので、是非お試し下さい。」
「あ、はい、ありがとうございます…。」
どぎまぎと言葉を返せば、店長さんはニコリと微笑みを携えて店の奥に消えて行った。
「……、びっくりした。」
「忍者かよ。」
「あたし、これにしようかな。」
そう言って指し示したのは、先刻オススメされた商品。
ラテマキアートの上に、クリーミーな泡が丁寧にトッピングされたもの。加えてコーヒー豆にもこだわりがあるらしい。
「んじゃ俺ブラック。」
「やっぱりそれは変わらないんだ…。」