ナツマツリ
侑に呆れた視線を向け、通り掛かった店員さんを呼び止めて注文を済ませた。
―――――――――――…
「美味しそう…!」
運ばれてきた実物からは香ばしい薫りが漂っていて。
爛々と目を輝かせたあたしは早速それを口に含んだ。
「わ、おいしー!」
「ナツ、一口。」
「……、本当に一口だけ?」
「任せとけ。」
「いやいや何が、…って飲み過ぎ!」
身を乗り出してわめき立てる窓際席の二人。
空が段々と藍色に侵食されていく時刻。
いち早く顔を出した月が、切り取られた窓枠から覗いていた。
-END-
( a tearoom )