ナツマツリ
と。
「あ、お囃子…。」
背後のグラウンドから聞えてきた太鼓や笛の音に思わず頬がゆるむ。小さい頃から携わってきたこの街の祭が、あたしは大好きなんだ。
「さて、今年もナツちゃんの笛に期待しているからな。頑張れよ、エース。」
「、はい!」
ニッ、と笑った圭さんに強く頷き返す。あたしは笛専門のお囃子で。しかも年々参加人数が減っており、終始吹き続けなければならないため自分との闘いである。
対して圭さんは演技をする側の人。中でもずば抜けて高い技術力を誇る彼は、この町内の代表を務めている方だ。
「(今年も夏が、始まる。)」
あたしは笛を包んだ布製のケースと水の入ったペットボトルを握りしめ、先に歩き出した圭さんの後姿を追った。
―――――…
―――――――――――――…