ナツマツリ


不自然に視線を泳がせた侑は、あたしの腕を掴んだまま建物の中へと歩みを進めていった。



――――――――――――…



今日二人で出掛けてきた目的は、テレビで目にした映画の予告に惹かれたからだ。


ちょうど3ヶ月記念も近かった為、その日に合わせて行こうか、という話になった。


本日はその記念日、という訳である。


「チケット買ってくる。」

「あ、ありがとう。」


些か薄暗い館内。数人が列を作る受付へと向かった侑の背中を見送り、その場に佇んでいた。


すると。


「かーのじょ!一人?」

「………。」

「あれ、無視?無視ですかー?」

「……、」

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