ナツマツリ
するり、音も無く掴まれていた腕が解放される。驚いて顔を上げれば、そこには眉間に皺を寄せた侑が。
途端、背後から彼の腕が肩にまわされ息を呑む。
その鋭い瞳は男の人を睨み付けていた。
背中に感じる彼の体温に、頬に集まっていく熱。
と。
「俺の女なんだけど?」
「…っ、」
どくん、と。耳元で掠れたように紡がれたそれに、心臓を鷲掴みにされた様な感覚に陥った。
「あ、そ、そうなんだー!お邪魔しましたー。」
すると引き攣り笑いを浮かべたその人は、慌てた様子で踵を返していった。
「………。」
「ゆ、侑。」