ナツマツリ
でも、と。手で口許を隠すあたしのもう一方の手を引いて歩き出した彼は言葉を続ける。
「気持ち良かった、だろ?」
「…!」
僅かな角度で振り向き、ニヤリ、と。意地の悪い笑みを浮かべた彼は確信犯に決まっている。
恥ずかしさに消えてしまいそうになる。
こちらを向けないようにぐいぐい、と。彼の顔を押し退けて反抗した。
あの後、恥ずかしさ勝って一言も落書きなど出来なかったプリクラは。
彼とあたしの、携帯電話の電池パック蓋に密かに存在している。
幼なじみから恋人に昇格した侑という男は、時折、非常に艶やかな表情を見せるオトコである。
-END-
( a movie theater )