ナツマツリ


む、と。唇を尖らせて苛立つ程整っているその顔を睨みつけてやる。


すると。

「っ、!」


啄むように、ちゅく、と。僅かなノイズを響かせて交わされた口付け。


真っ赤になってぱくぱく、口を開閉していれば。


「キスして欲しいって顔に書いてあったから。」

「書いてません…!」


ばしり、と。近くに置かれていた新聞紙を丸め、セットされた頭を軽く叩いてやった。



―――――――――――――…



前方で忙しなく動くワイパー。

窓枠から覗く流れる景色。

右を向けば目に入る端正な横顔。

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