ナツマツリ
と。
「ね、ほんと暑い。」
聞こえる筈のない返答に狼狽し、勢いよく振り返る。が、誰もいない。
「(幻聴…?)」
暑さに頭までヤラれたか、と無理やり心中で言いくるめ、前に向き直ることに。
しかし、
「な、誰…!」
眼前には明るめのブラウンに染色された髪の前髪部分をピンで止め上げ、人懐こい笑顔で佇む青年。
「誰って、侑だけど。」
「は?、ちょっと失礼。」
「(…近い。)」
あまり視力の良くない目を凝らし、その端正な顔立ちを見つめた。