ナツマツリ
諦めよう、と。双手を侑の首元に巻き付けようとした、そのとき。
「あー!ゆう、なにやってんだよー!」
バタン!という音と共に、防音機能付きだというこの部屋の扉が開け放たれた。
そして今流行りだという仮面ライダーのパジャマを身に纏った陽が、助走をつけて侑に飛び蹴りをぶちかます。
「いってぇ!何すんだ陽!」
「うるせー!ナツにさわるんじゃねー!」
「あぁ?ナツは俺の嫁なんだよ!」
「そーいうの、"けんりょくをふりかざす"っていうんだぞ!」
「あぁクソ!マセガキ!」
「(大人げないなー…。)」
子供と同レベルのやり取りに、頭を抱えたくなった。
ぎゃあぎゃあ喚き立てる二人を尻目に服を身に纏い、侑と対峙している陽の背中を押して部屋の外へと促した。