ナツマツリ



くしゃり。前髪を隻手で掻き上げ、額に手を乗せたまま、はー…、と息を吐き出した。



"帰ったら俺が言うからって陽に言っとけ。"

「え、大丈夫なの?」

"お前は俺を何だと思ってんだよ。"

「…エロマシーンとか。」

"……………おい。"



そう不満げに声を洩らすものだから声を上げて笑ってやった。病院だから余り反論出来ないのだろう。ザマーミロ。


でも、



"ナツ。"

「、」



その掠れたような低めの声。侑だけが持つ独特の声音に名前を紡がれると、胸の奥が甘く疼き出す。


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