ナツマツリ



その日の晩。



「ただいまー。」



住み慣れた自宅のドアを開け、近所迷惑にならない程度にそう口にした。


すっかり闇に覆われた外から、明かりの漏れる室内へと足を踏み入れる。と、そこで違和感。



「…あ?」



ナツの靴がねぇ。あの、何つったか、どーだかっつーブランドの一張羅のパンプス。


玄関で一人首を捻っていると、今年から中学に通い始めた息子の陽がリビングから顔を出した。



「あぁ、侑。」

「……お前なぁ。そろそろ俺らのこと名前で呼ぶのやめろよ。あのよ、ナツどこ行った?」

「癖なんだよ、今更変えらんねぇだろ。ナツなら佳奈さんと飲みー。」

「聞いてねぇ…。」


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