ナツマツリ
「謝んじゃねぇよ。」
途端にチク、と痛みを帯びた首筋。変わらずその大きな掌で刺激される胸部に、熱い吐息が洩れた。
「…別にいい。ナツの気持ちが俺んとこに戻ってきてくれたんなら。」
「……気持ちはどこにも行ってないよ。ただ、」
「ん?」
いつもと違って優しくそう聞き返してくれる侑。だから顔ごと肩越しの彼を見上げて、本音をぶつけるのが礼儀だろう。
「一時期、身体を重ねることに意味を見出だせなくなってただけ。でも、気持ちがあるから求めてくれるんだって気付いたから。あたしもちゃんと応えたほうが良いと思ったんだ。」
珍しく饒舌にそう述べたあたしの頬に、するりと骨張った手の甲を滑らせた侑は一言、「今更かよ」と。
その後の噛み付くような、でも優しさの孕んだ口付けによってその顔はちゃんと見えなかったけれど。
少しだけ泣きそうに見えたのは、あたしの気のせい?
-END-
(男と女の諸事情)