ナツマツリ
途端。視界の端で、侑がニヤリと微笑した気がした。
「あ?なに、ナツ。」
そう言いながら、故意にあたしの顔を覗き込む。思わず目を見開き、更に色を深める頬に両手を当て俯いた。
「ま、まだ誰も吹いてないから…!」
話の内容は、日頃交わせる程度のものなのに。侑のその行動が、言葉と行動をちぐはぐにする。
そのとき。
「侑、あんま苛めんなって。」
くすくす、と。微笑を洩らす圭さんに救出されたあたし。助かった…!
「俺もナツちゃんの笛聞きたいんだけどな。」
「今すぐ吹きます…!」
恥ずかしくて仕方なくて。あたしは、完全に照れ隠しをするために先刻渋っていたことを簡単に了承したのだった。