ナツマツリ
す、と。篠笛を真横に構えたあたしは一度目を瞑って精神を研ぎ澄ます。
お囃子に関しては、誰にも負けないくらいに誇りを持っているつもり。
一息吐いて、視界を開く。瞬時に鋭く息を吸い込み、一音ずつ丁寧に音を奏でてゆく。
フレーズが進むにつれて、どんどん自身の世界に入っていくのを感じる。
指を複雑に動かし、些細な音の変化を生み出していく。
あたしの笛の音に合わせて、脳内で太鼓が鳴り響く。
一度吹き始めたら、周りの目なんて全く気にならない。
――だから、なのかな。
愉しげに笛を奏でていくあたしを見詰めていた侑が、どんな表情を浮かべていたのかなんて。
全く、知らなかったんだ―…。
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