ナツマツリ


あたし何か変、だよ。オカシイよ。


「(抱き締められてる、)」


相手は侑なのに。どうして、こんなに心臓が煩いんだ。


頬に迸る赤を隠すように、視線を落とし俯く。


此処、出入り口付近だし。誰かに見られてるかもしれないのに、唯唯あたしは固まるばかり。


「ゆ、う…、」


やっとのことで、絞り出した声。


それは、蚊の鳴くような酷く情けないものだった。


と。

「……わり、」


ゆっくりとした動作で侑から離されていく。


視界の奥には数多の星が夜空で瞬いていた。宵の暗さが邪魔をして、彼の表情は見えなかった。

< 29 / 232 >

この作品をシェア

pagetop