ナツマツリ
あたし何か変、だよ。オカシイよ。
「(抱き締められてる、)」
相手は侑なのに。どうして、こんなに心臓が煩いんだ。
頬に迸る赤を隠すように、視線を落とし俯く。
此処、出入り口付近だし。誰かに見られてるかもしれないのに、唯唯あたしは固まるばかり。
「ゆ、う…、」
やっとのことで、絞り出した声。
それは、蚊の鳴くような酷く情けないものだった。
と。
「……わり、」
ゆっくりとした動作で侑から離されていく。
視界の奥には数多の星が夜空で瞬いていた。宵の暗さが邪魔をして、彼の表情は見えなかった。