ナツマツリ


先輩は簡単に言っていたけれど、帰りの流し囃子が結構キツかったりするんだよね…。


そんなことを思いながら、篠笛の鳴りを良くするために水通しをしているとき。退場の笛が鳴り響いたのを耳にして慌てて立ち上がった。


祭のトラックが動き出す。それと同時に、横にピタリと付き添って笛を真横に構える。


と。

「(子供…!?)」


トラックの前に一人の男の子が飛び出してきた。


かなりの低速運転だけれど、接触すれば多少なりとも負傷してしまうかもしれない。


しかし、頭で考えるよりも先に、あたしは駆け出していた。


「君、危ないから…!」


早急にその小さな掌を握り、歩道側へ走って連れて行くことに成功。


と、次の瞬間。

「いった…!」

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