ナツマツリ
「お姉ちゃん、血…。」
「大したことないよ。」
歩道に駆け上がる際、足元のコンクリートの出っ張りに躓いて転んでしまったのだ。
「君が怪我しなくて良かった。」
小さな男の子の頭を優しく撫でる。本当に、間に合って良かった。思わず安堵の息を吐く。
「危ないから、もう飛び出しちゃ駄目だよ。」
「ごめんなさい…。」
そして。ごめんなさい、と。
何度もあたしに謝って、男の子はお母さんと供に人込みに紛れていった。
その様子をただ茫然と見詰めていると。
「…何が大したことないんだよ。」
「、」
はあ、と。酷く呆れた声色が鼓膜を揺らした。