ナツマツリ
「ゆ、う。」
振り仰げば、あたしの背後に立っていた侑と視線が合う。酷く呆れた表情を浮かべていたけれど、口許は緩やかに弧を描いていた。
「ほら、しょうがねぇから乗れば。」
そう述べて、広い背中をあたしの眼前に晒す。それだけで高鳴る心臓。
「うん。」
久しぶりに言葉を交わしただけで、こんなに胸が熱くなるから、不思議。
そっと侑の背中にしがみ付くと、彼が立ちあがったことにより一気に目線が高くなった。
「汗臭い。」
「……てめぇ。」
「嘘だよ。」
「はぁ?」
しがみ付く半纏は汗ぐっしょりだけど、それは侑が居るっていう証拠だから嬉しくて仕方ないんだってば。