ナツマツリ


「なんで、ですか?」

「今夜新幹線で帰るらしくてね。また来年お願いします、って言ってたけど。」


新幹線で、帰る?帰るって何処に?


……嗚呼、あたしって。


「(侑のこと、何にも知らないんだった。)」


自嘲気味の渇いた笑みを洩らしそうになり、唇を強く噛み締める。


また踏み出し損ねた、なんて。情けなさに目頭が熱くなる。


と。

「出発までまだ時間がある。だから今行けば間に合うよ、ナツちゃん。」

「……、え、」


思わず顔を上げれば、穏やかに微笑む圭さんの姿。


「此処から駅までは、そう遠くないだろ?ほら、いいから行っておいで。」

「…圭、さん。」

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