ナツマツリ
「っ、ありがとうございます…!」
ペコリ、頭を下げて駆け出し、あたしはその店をあとにした。
「侑も底意地が悪いなー。」
あたしの後姿を見送りながら圭さんが苦笑まじりに吐き出した独白。
それは、誰に聞かれることもなく会場の騒々しさに飲み込まれていた。
――――――――――――…
「はぁ、はぁ、…っ、」
全速力で走って辿り着いた駅のホーム。
乱れる呼吸を整え、改札を通るために入場券を購入した。
「(居ます、ように…!)」
カンカン、と。古びた鉄の階段を駆け下りながら、祈るように進んでいく。