ナツマツリ
あたしを強く抱き締めたまま、はー…、と息を吐き出すと。
「俺が、言う筈だったのに。」
「……、え?」
思わず顔を上げて、間近に居る彼を覗き込んだ。
「よく聞いとけよ。」
「俺は…――物心が付いた頃から、お前に惚れてるんだぜ。」
「―――…!」
それは、所謂、最高の殺し文句だった。
そして、長い指で顎を少し持ち上げられて。
首を傾けて近づく彼に目を瞑れば。ちゅ、と触れるだけの優しいキスが降ってきた。
「――なぁ、ナツ知ってた?」
相も変わらず、唇が触れそうなくらい近い距離を保ったまま問い掛けてくる侑。