ナツマツリ
ぐ、と。手首を侑に掴まれてしまう。
「待てって、ナツ。」
「――…っ、離して。」
嗚呼、もう。駄目だ。
ポタポタ、涙が堰を切って溢れ出してくる。
なんで侑のことになると、あたしってこんなに弱いんだろ。
腰を屈め、嗚咽まじりに涙を流すあたしと視線を合わせた彼。
そして、開口一番に言った言葉は。
「ナツ、誤解。浮気じゃない。部屋に居たのは俺の友達で男。」
「………、は?だって靴、」
そう言いつつ視線を下げていくと、例のピンクのスニーカーが確かに存在する。
…だけど。目を凝らして滲む視界の中それを見詰めると。