ナツマツリ
「……、男物、だ。」
「だろ?」
掴んでいた手首を開放し、腕を額に当てた侑。
そのまま玄関の壁に寄り掛かり、はー…、と長く息を吐き出した。
「ゆ、侑。」
「…ん。」
「なんか…ごめん、勘違いしちゃって。」
物心が付いたときから想っていてくれた侑を疑うなんて、なんて最低なことを。
自己嫌悪に陥って俯いたあたしの目元を、侑の長い指が優しく撫でた。
「ナツのせいじゃない。」
「…違うよ、」
「急に押し掛けてきたキツネのせいだ。」
……キツネ?聞き覚えのある名前に、目を白黒させるあたし。