ナツマツリ
舌打ちしたい衝動を抑えつつ、両手いっぱいにそれらを抱え込む。
と。
「(うわ、落ちた…!)」
ヒラリ、抱えきれず地面に落ちたのは一枚のハガキ。ミーンミーン、という蝉の鳴き声に苛つきながらも慎重に腕を伸ばした。
「あれ、」
ハガキを目にした自分の口から思わず独白がこぼれる。祭の開催を知らせるそれ。差出人を見れば、あたしが毎年お囃子として参加している町内からのものだった。
表面にはこの街だけで行われる祭の絵が大々的に描かれていて。それは十分すぎる程あたしの中の興奮を呼び起こした。
所狭しと記載された日程表を確認すると、練習開始日はなんと今日。目を丸くしたあたしは慌てて家に駆け込み、叫んだ。
「お母さん…!」
「遅かったわねー。どうしたの?」
「あたし今年も祭に参加してもいい?」