ナツマツリ


そう言い放ったあたしは、キッチンへと滑りこんだ。


完全なる言い逃げである。しかしながら、致し方あるまい。


「(…てか、)」


さっき侑、もういいよって言おうとしていたような…。


ならば言わなくても良かったのでは。


発言してしまったものは取り消し出来ない。


考え無しに声を張り上げた自分に頭を抱えた。


と。

「っ、」

「つかまえたー。」


背中に感じる体温。


耳元を掠めた侑の声。頬に赤が迸った。

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