片恋桜
何分か、経ったのかな・・・?

大地が口を開いた。

「普通。つーかびみょー」

桜の目の前は真っ暗になった。

何かがなくなってしまったような感じ。

わけのわからない感情が、桜の心を包む。

あれ・・・?どうしたのうち・・・。
わかってたじゃん。振られるなんて。

いまさら何を傷ついてるの?いまさら―――・・・。

「そっか・・・わかった――・・・」

桜がそういうと、大地は教室を後にした。
桜も大地の後に続いて教室を出る。

静かな廊下に一人、歩く音が鳴り響く。切なげな音。

桜の心のように。桜は自分の教室に戻り、窓を開け、空を見る。

空はあんなに青いのに・・・。なんでうちは・・・。

桜の瞳からは涙が流れ落ちる。誰もいない教室に、泣き声が伝わった。

振られたんだ・・・。うち・・・。

ガラッ!!

誰か来たっ!!

桜は急いで瞳にたまっていた涙を拭き、

教室に入ってきた真意に笑顔を向ける。

「桜・・・」

「真意」

「どうだった・・・?大地帰ったけど・・・」

「ああ!うち?振られたよ?
 普通。つーかびみょーだって。あきらめるよ・・・。
 やっぱ、うちには無理だったんだもん・・・」

真意は近くにあった机を、
思い切り蹴飛ばす。桜はあまりの迫力に唖然としている。

「ダメ!聞いてみればいいじゃん!
 びみょーってどういう意味?って!
 後悔する前に泣いても、もう遅いんだよ!?
 言いたい事は言わなきゃ・・・。絶対に後で後悔する・・・」
 
 
 
 
 
「お母さん~!次風呂はいるよ~!」

桜は机に座り、宿題をし始めた。


“絶対に後で後悔する・・・”


桜の頭の中にはその言葉が離れない。

真意のあのわけのわからない表情も、桜は何も知らない。
桜はカッとなり、机の上の筆箱をつかむ。

「あ――もうっ!!」

筆箱は壁に当たり、中身が散乱した。

桜の息が荒くなっている。

なんで・・・?真意・・・。教えてよ・・・。大地も・・・。

目を閉じればまた、大地しか思えなくて――・・・

桜はベッドの横になり、そのまま寝てしまった。
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