きっとサクラが咲く頃
「居る、と言えば……そうなの、かな?」

「何それ?」
「遠距離でほとんど連絡取ってないから」
「自然消滅?」
「って言うには弱い…のかな………」

自然消滅も何も…そもそも形成すらされてないので消滅のしようもない。

「でも別に……敢えて他の人作るまでもないかなって感じだから」
そう言ってジョッキのビールを飲み干す私を、みんなは眉間に皺を寄せて見ていた。


「ホントに好きなの?その人のこと」

そう聞かれると……わからなくなる。

「長いこと一緒に居たから…よくわからない………」

「いつから付き合ってんの?」
「そもそも幼馴染だから、人生半分以上一緒」

「……マジで?」
百田さんは、目を見開いて私を見つめている。百田さんだけでなく、みんな。

「多分さ、これ以上大切に思える人は現れない気がしてるんだよね。だったらまぁいいかって……」
淡々と話す私とは違って、みんなは黙ったまま見つめ合っている。


「……でも勿体無いと思う」
そう沈黙を破ったのは‐若園君だ。

「もうちょっと外に目を向けたら、その人以外に世界が広がるんじゃないの?」

「確かに、そうだよねぇ」とみんなが同調し、頷く。

「勿体無いよ。その人だけが男の人じゃないんだから」
そう言われると……私は俯くしか無かった。
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