きっとサクラが咲く頃
夜九時になる前に、二時間制のタイムリミットがきたので解散になった。
電車は途中までみんな一緒だけど、家の最寄り駅では私と乗り換えの若園君の二人が降りる。電車が到着したら「じゃぁまた明後日」と言って、若園君と二人で電車を降りた。

二人で改札に向かう階段を下っていると…ふいに若園君が聞いた。「畠平、ホントにいいのか?」と。
「一人だけしか見てないのは勿体無いと思うけど?」

「………若園君には、わからないよ」

若園君だけでなく‐きっとみんなわかるはずはない。


「自分をこの世で一番大切にしてくれる人が居て…その人を差し置いてまで、見つける必要ってあるの?」

「そんな『大切にしてくれる人』なんか…分からないじゃん。他の人の方が大切にしてくれる可能性もあるじゃん」

「……みんな、同じこと言うんだね」


『それだったら浦崎を振ることなかったじゃん』
昨日言われたあの言葉が、頭に浮かぶ。



「だって俺は、お前のことかしんぱ………畠平?」
若園君の向こう側‐改札の向こう側に、あの姿が見えた。
その瞬間…私はあの姿しか見えなくなる。
< 25 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop