きっとサクラが咲く頃
でも……それは、私も同じような思いを抱えている。

「匠馬は……私とどうなりたいの?」

私達の間に存在するのは『過去』と『今』の二種類しかなかった。
未来はいつも曖昧で‐同じ方向を見ているようで全く違っていた。だから私は、裏切られた気持ちになってしまう。

「匠馬の未来に、私は居るの?」

絞り出すように、消えそうなぐらい小さな声で匠馬に問いかける。
私がずっと…ずっと聞きたかったこと。でも、怖くてずっと聞けなかったこと。


すると匠馬は、私の手を包み込むように握った。

「本当は、千聡とずっと一緒に居たいんだよ。
これから先も、ずっと一緒に居たい。
千聡がここで待ってくれている。それだけで……俺は、頑張ろうって思えるから」

初めて聞いた、匠馬の本音。
そして匠馬は‐私を抱き締めて、耳元で囁く。


「愛してるよ、千聡」

涙が……ポロポロ溢れて、止まらない。

「初めて……初めて言ったね…………」

匠馬の胸に沈み込むように寄りかかると、更に強く抱き締められる。
そしてまた、あの言葉を囁く。
「愛してる」と。


そのまま泣きじゃくる私を抱き締めながら、匠馬は一晩中、何度もその言葉を言った。
それは今までのモヤモヤした気持ちを吹き飛ばすような…そんな魔法の言葉のように思えていた。
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