不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
その後、朝一番で報告書を出し、俺たちは午前中別な仕事にかかっていた。
昼前に局長にブリーフィングルームに呼び出された。

「報告書は目を通した。主計局の課長とも話し合ってきた。一度これであげて、Ｋ省側と交渉する」

すべてはＫ省の出方次第になるということだ。おそらくは刑事罰ではない形で鬼澤は処分される。

「しかし、おまえたちはもう一息仕事をしてもらう。ホテルに張り込んだ時、黒瓦組の若頭は見ているな」

黒瓦組の長男のことか。覚えている。翠がナンパされて危ないところだった。

「どうやら、鬼澤は黒瓦組に出資している。自分に都合悪い人間の監視を言いつけているだけの関係じゃない」
「ネット詐欺の関係ですか？」
「そうだ。鬼澤は、黒瓦組に出資し、詐欺に使う事務所や中継に使う海外拠点を用意してやっている。見返りをもらう条件で」

俺の見当は当たっていた。調べれば調べるほど黒瓦組のネット詐欺は巧妙だ。手伝っている有力者に、鬼澤とＴ建設の会長がいるだろうことは予測していた。

「そのあたりの裏付けをとってほしい。暴力団関係者に接近することもある。これまでより一層気をつけろ」
「はい」

翠と声を揃えて返事する。これまでも危ない人種にはかかわったことはある。しかし、翠はあまり接近させないように気を付けなければならない。
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