不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
K省二人組は、周囲に注意を払うことなく、VIPルームの方向へ。その後ろ姿はすかさず映像に押さえた。しかし、それ以降は動きがない。可能であるならば若頭と一緒のところが撮りたいのだ。
「少し強引に近づかなければダメじゃない?」
翠は言う。しかし、できれば接触は避けたい。
「前回とだいぶ雰囲気が違うし、たぶん私が近づいてもバレないと思う。酔ったフリして、VIPルームの前まで行ってくる」
「相手は裏の業界の玄人だ。不審者がおいそれと近づけば、すぐに怪しまれる」
「弱気ね!」
翠が苛立たしそうに言う。弱気じゃない。慎重になっておきたい場面なだけだ。
「翠の面割れの問題じゃない。ここで無理をして特務局が嗅ぎ回っていることがバレるのがまずい。連中、しっぽを出さなくなるぞ」
「そうかもしれないけど。……じゃあ、何か手立てはある?」
苛々と尋ねる翠は、俺の態度を及び腰に見ているのだろう。しかし、勇気と蛮勇は違う。そして翠を矢面に立たせるわけにはいかない。
「情報ではショーのタイミングでVIPルームのカーテンが開く。その時にしよう」
「私たちの位置じゃ遠すぎ。局長の位置じゃ近すぎだわ。目立ちすぎる」
「その辺も合わせて雁金さんと打ち合わせしてくる」
翠を残し席を立つと、偶然を装い、局長もトイレで合流してくれた。
三人で手短に打ち合わせをする。
「今回は強引な手立ては取らなくていい。入りと出は押さえるし、K省側は裏付け材料がほしいだけだ。鬼澤を切るためのな」
「少し強引に近づかなければダメじゃない?」
翠は言う。しかし、できれば接触は避けたい。
「前回とだいぶ雰囲気が違うし、たぶん私が近づいてもバレないと思う。酔ったフリして、VIPルームの前まで行ってくる」
「相手は裏の業界の玄人だ。不審者がおいそれと近づけば、すぐに怪しまれる」
「弱気ね!」
翠が苛立たしそうに言う。弱気じゃない。慎重になっておきたい場面なだけだ。
「翠の面割れの問題じゃない。ここで無理をして特務局が嗅ぎ回っていることがバレるのがまずい。連中、しっぽを出さなくなるぞ」
「そうかもしれないけど。……じゃあ、何か手立てはある?」
苛々と尋ねる翠は、俺の態度を及び腰に見ているのだろう。しかし、勇気と蛮勇は違う。そして翠を矢面に立たせるわけにはいかない。
「情報ではショーのタイミングでVIPルームのカーテンが開く。その時にしよう」
「私たちの位置じゃ遠すぎ。局長の位置じゃ近すぎだわ。目立ちすぎる」
「その辺も合わせて雁金さんと打ち合わせしてくる」
翠を残し席を立つと、偶然を装い、局長もトイレで合流してくれた。
三人で手短に打ち合わせをする。
「今回は強引な手立ては取らなくていい。入りと出は押さえるし、K省側は裏付け材料がほしいだけだ。鬼澤を切るためのな」