不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「いえ、結構です。もう戻らなきゃ」
翠は言葉すくなに拒絶している。彼女の性格ならもっと強く断るだろうけれど、今は潜入調査中だ。目立たず印象に残らない対応を考えているのだろう。
「なんで?誰か友達と来てんの?女の子なら一緒においでよ」
「彼氏と……来てて」
カーテンの向こうから大きな笑い声が聞こえた。
「そんな男捨ててきな。きみだって、俺たちに興味があったから覗きにきたんでしょ?」
「この人についてきたらいい思いできるよ」
「絶対楽しいって」
「困ります!」
翠が抗う様子がわかる。助けに入りたい。拳を固め、すぐ近くで待機しながら俺は歯を食いしばった。
「面倒くせえな。ハーブ持ってこいよ。嗅がせておとなしくさせちゃおう」
ハーブ、……危険ドラッグのことか。麻薬や覚せい剤じゃなくても、充分危ない。そして翠が拉致されてしまう。
「いや!」
レースのカーテンが大きく揺れ、抗おうと身をよじった翠の腕が見えた。
すかさず、俺はその腕を引いた。
カーテンの隙間からバランスを崩した翠が見える。その目に宿る恐怖に、男たちに対する怒りが湧いた。絶対に守らなければならない。
翠の身体を抱き寄せると、間を置かず、わらわらとVIPルームから男たちが出てきた。K省の官僚たちも勢いで出てきている。
願ったり叶ったりの揃い踏みだが、今は写真を撮る余裕はなさそうだ。
翠は言葉すくなに拒絶している。彼女の性格ならもっと強く断るだろうけれど、今は潜入調査中だ。目立たず印象に残らない対応を考えているのだろう。
「なんで?誰か友達と来てんの?女の子なら一緒においでよ」
「彼氏と……来てて」
カーテンの向こうから大きな笑い声が聞こえた。
「そんな男捨ててきな。きみだって、俺たちに興味があったから覗きにきたんでしょ?」
「この人についてきたらいい思いできるよ」
「絶対楽しいって」
「困ります!」
翠が抗う様子がわかる。助けに入りたい。拳を固め、すぐ近くで待機しながら俺は歯を食いしばった。
「面倒くせえな。ハーブ持ってこいよ。嗅がせておとなしくさせちゃおう」
ハーブ、……危険ドラッグのことか。麻薬や覚せい剤じゃなくても、充分危ない。そして翠が拉致されてしまう。
「いや!」
レースのカーテンが大きく揺れ、抗おうと身をよじった翠の腕が見えた。
すかさず、俺はその腕を引いた。
カーテンの隙間からバランスを崩した翠が見える。その目に宿る恐怖に、男たちに対する怒りが湧いた。絶対に守らなければならない。
翠の身体を抱き寄せると、間を置かず、わらわらとVIPルームから男たちが出てきた。K省の官僚たちも勢いで出てきている。
願ったり叶ったりの揃い踏みだが、今は写真を撮る余裕はなさそうだ。