不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
この時、貼り出されたテスト結果を目にし、初めて豪は私を見た。
その視線に驚きがあったことは私にとって屈辱であり、若干の優越感を覚えさせた。あんたが無視してきた許嫁様は、少なくとも馬鹿じゃない。あんたに侮られるような女じゃない。
『うかうかしてると足元掬われるわよ』
通り過ぎ様に言ってやるのだから私も性格が悪い。どう考えても、漫画の噛ませ犬キャラのセリフくらいチープだ。でも言ってやらなきゃ気が済まなかった。
かくして私たちの闘争の火蓋は切って落とされたのだ。
こののち、豪は完全に私を敵と認識したらしい。歯牙にもかけないという態度は変わり、はっきりと敵対意識を出してくるようになった。
中学高校と私たちは成績にスポーツにと争い続けてきた。豪が生徒会に入れば、私は風紀委員に入った。豪の小論文がコンクールに出れば、私はデザインで都の展覧会に出た。
共通の友人の陣内(じんない)祭も加わり、私たちは“帝士の三傑”と妙な二つ名を冠されながら、大学まで一緒に過ごしたのだった。
仲の悪さは相変わらずだったけれど、いつしか互いに無視し合うより直接文句を言い合うようになっていた。
その方が早いし、ストレスフリーなのだ。喧嘩っていうこと自体がストレスではあるんだけど、無視し合う労力は陰険で鬱々としている。そうではなくて、言いたいことを言い合うことで、絶妙なバランスを保ってきた。
私たちが喧嘩を始め、間に挟まった祭がそれを軽快な話術で収めるというのはよくある光景だったように思う。
その視線に驚きがあったことは私にとって屈辱であり、若干の優越感を覚えさせた。あんたが無視してきた許嫁様は、少なくとも馬鹿じゃない。あんたに侮られるような女じゃない。
『うかうかしてると足元掬われるわよ』
通り過ぎ様に言ってやるのだから私も性格が悪い。どう考えても、漫画の噛ませ犬キャラのセリフくらいチープだ。でも言ってやらなきゃ気が済まなかった。
かくして私たちの闘争の火蓋は切って落とされたのだ。
こののち、豪は完全に私を敵と認識したらしい。歯牙にもかけないという態度は変わり、はっきりと敵対意識を出してくるようになった。
中学高校と私たちは成績にスポーツにと争い続けてきた。豪が生徒会に入れば、私は風紀委員に入った。豪の小論文がコンクールに出れば、私はデザインで都の展覧会に出た。
共通の友人の陣内(じんない)祭も加わり、私たちは“帝士の三傑”と妙な二つ名を冠されながら、大学まで一緒に過ごしたのだった。
仲の悪さは相変わらずだったけれど、いつしか互いに無視し合うより直接文句を言い合うようになっていた。
その方が早いし、ストレスフリーなのだ。喧嘩っていうこと自体がストレスではあるんだけど、無視し合う労力は陰険で鬱々としている。そうではなくて、言いたいことを言い合うことで、絶妙なバランスを保ってきた。
私たちが喧嘩を始め、間に挟まった祭がそれを軽快な話術で収めるというのはよくある光景だったように思う。