不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「わかんない」

私はぼそっと言った。それから顔を上げて祭を見た。

「ただ、私は豪に勝ちたいの。それがいちばんの目標。一度でいいから完全勝利したいのよ。学生時代は勉強、今は仕事で」
「翠はブレないね〜。豪、前途多難だ」

祭が笑って、それから時計を見た。

「もう行く時間だ。俺なんか誘ってないで、こういう時間は豪と使いな。翠から誘ってやれば喜ぶよ」

なんだか上から目線だ。私は唇を尖らせて言った。

「もうじき、私の誕生日。その時は豪と祭で、私にご馳走して」
「オッケ、それは任せて」

祭は爽やかに笑うとコーヒーショップを出て行った。
サンドイッチとケーキくらいじゃ、お腹はいっぱいにならなかったらしい。それは、私もだったけど。


「どうしようかな」

祭の言う通り、豪を誘ってみようか。私から誘った方がフェアだろうか。
ランチでも食べない?なんて軽く言って。
……駄目だ、自分からじゃできる気がしない。

この前サパークラブに潜入した時の豪はものすごく頼りになった。そして、ちょっとだけ格好よかった。
私の失態をフォローするどころか、危ないところを助けてくれた。私を抱え、逃走した豪は王子様というよりアクション映画の主人公みたいだった。
豪は後々「無理だ」って言ってたけど、30人くらいの悪漢をちぎっては投げられそうな雰囲気だった。
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