不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

「逃げるな。今日は男のエチケットのアレがないんだよ。だから、我慢しますって言ってる」
「あ、あんたねぇ！そーいうことをハキハキ言わないでよ！」

祭と三人の予定だったし、豪は私とこんなキスをしてしまうことも想定していなかったのだろう。
豪は、私とキスして、そういう気持ちになってしまったのだ。それは嫌な気持ちではない。

豪は赤い頰のまま、そっぽを向いている。
空気が変なままだ。どうしよう！

「あのね！健全なバースデーパーティーのためにまた映画でも見ない？」

私は慌てて鞄からBlu-rayを取り出した。豪と祭が本格的に飲み始めてしまったら退屈だろうと持ってきた洋画コメディだ。

「賛成」

豪が小さく言って頷く。
私はいそいそとディスクをセットし、リモコンを持って、豪の隣にちょっとだけ距離をとって座った。

「翠、誕生日プレゼント」
「それはあとでいいよ！」

また妙な雰囲気になると困るので、豪が用意してくれたらしいプレゼントは後回し。まずは映画で笑おう。

豪も心得たようで、私たちは思いっきり笑いながらコメディを見た。見終わったら、パソコンを接続し、さらにネット配信のコメディの洋画を見続けた。
恥ずかしすぎて、間が持たないから映画で埋めているうちに、ふたりそろってそのままソファで眠ってしまった。