不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

土曜日、私はベイエリアにある教会に豪を呼び出していた。

今日のために選んだ白のワンピース。髪の毛とメイクは美容院で朝一番で仕上げてもらった。
ここの教会は以前仕事で張り込み現場に使わせてもらったことがあるので知っていた。真夏の今は結婚式で使われることもほぼなく、日曜日以外は一般にも貸しだしているそうだ。今回、神父さんは快く貸してくれた。

座席に腰かけ、私はじっと待った。外からセミの声が聞こえる。古い建物なので冷房の効きはイマイチのようだ。汗がじわりとにじむ。

やがて背後でドアが開く。
豪が立っていた。

「翠どうした。こんなところで」

呼ばれて素直に来るなんて豪はお人好しだ。
それとも私の決心に気づいているのだろうか。

「ここまで来て」

私は立ち上がり豪を見据えて静かに言う。
心臓がどくんどくんと音を立てている。

歩み寄ってきた豪を見上げ、次の瞬間、私はその襟首を掴み上げた。
豪が面食らった顔をして次に肋骨の痛みに顔を歪める。
構わず私は顔と顔を近づけ、怒鳴るように言った。

「斎賀豪！私にプロポーズして！」