不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「翠、俺の負けだ。……降参だ」
「は!?なによ!」

再び食ってかかろうとした私の身体を抱きとめ、豪が唇を重ねてきた。
抗いそびれて私はキスを受ける。
顔を離すと豪がささやいた。

「翠、好きだ。俺と結婚してくれ」

私の顔はたぶん一瞬にして真っ赤になったと思う。豪が私を見つめ、想いを重ねてくる。

「おまえのバイタリティ、勇気、根性、負けん気、すべてが眩しいと思ってきた。愛らしい顔も美しい身体もいつか俺のものになると思うと胸が躍った。翠、最初からおまえには負けてるんだ。俺はおまえに恋してる」
「ちょ、調子のいいこと言わないで!」

プロポーズしろと自分で言っておいて、豪の真摯で情熱的な瞳と言葉に捉えられたら慌ててしまう。
抱擁から脱出しようともがくけれど、さらにきつく抱き締められ、唇を奪われた。

「好きだ、翠。おまえを危険や斎賀の煩わしさから解放したかった。おまえに相談せず、独断で動くことでおまえを傷つけた。許してほしい」
「ホント、勝手よ。主計局になんかいったら、風間さんにいびり倒されちゃうじゃない。あんたが振ったばっかりなんだから」
「素直にいびられる女じゃないことは知ってる」

ごつんと豪の背中を小突くけれど、豪はびくともしない。
肋骨を怪我してるくせに頑健なところが憎らしい。
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