不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「プロポーズしたぞ。返事がないんだが」

豪は私をきつく抱き締めたまま言う。そう言えば、私からはきちんと言葉にしていない。
言わなければ。ずっと思ってきた言葉を。
私は豪を見つめ、言った。

「大好き。豪のことが大嫌いで大好きで、ずっとずっと一緒にいたい」

豪が笑った。

「大嫌いで大好きとは斬新だ」
「そうよ。基本、あんたみたいな嫌味で意地悪で傲慢な男は嫌いなの」
「俺も見栄っ張りで隙だらけで間抜けな女は嫌いだな」
「よく言うわ、大好きなクセに」
「おまえこそな。俺に意地悪言われるのが楽しみなんだろう」
「馬鹿言ってんじゃないわよ」

言い合いながら私たちはたくさんキスをした。12年間我慢していた分を埋めるみたいに、何度も何度も唇を重ねた。

誓いのキスにしては多すぎるキスを終えると、名残惜しく身体を離す。猛烈に恥ずかしいけれど、私は腕を組んで豪に告げた。

「泊まるところ!予約してるんだから、覚悟してよね」

私の偉そうな宣言に豪が再び笑った。

「どう考えても覚悟するのは翠の方だろう」
「う……」


結局その後、豪の言葉の通りになったわけだけれど、私はやっと素直になれた安堵と大好きな人と抱き合った幸せを感じ、眠りについたのだった。

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