不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「なにすんのよ!」
「なにもしてない」
「小学生みたいなことしないで!」

私が仕返しに豪の背中をボコボコ叩いているとエレベーターホールに現れたのは主計局の風間さんだ。

「やぁだ。職場でイチャついてるバカなカップルがいる」

面倒な人出現!
さっと豪から距離を取りつつ、風間さんに会釈する。あなた、職場で堂々と豪に迫ってたじゃないのよ。

「幸せオーラ振りまかないでくれる?高校生の頭の悪い彼氏彼女みたいよ」

風間さんが言う嫌味に豪が頭を下げて答える。

「すみません。幸せ過ぎてつい。以後気をつけます」

幸せ過ぎてとかさらっと言うんじゃないわよ。私がイライラしていると、それ以上にイライラムカムカしている様子の風間さんは口の端をひくつかせながら言う。

「あらぁ、上手くいってるみたいで何よりだわ。斎賀も安泰ね」
「そうですね。式はまだ先ですが年明けに結納が決まっていますので」

火に大量のゴマ油でも注ぎたいのか豪は笑顔で答える。あんたばっかじゃないの?

「じ、時間!間に合わない!行こう!……風間さん、失礼しますね」

私は豪を引っ立てるようにやってこないエレベーターは無視して階段を降りることにした。
私に追い立てられ階段を降りながら豪は楽しそうだ。

「たぶん、彼女、男に振られたことないんだよな。だから、俺に振られたのを未だに引きずってる」
「まあ、このくらいの嫌味で済むならいいんじゃない?っていうか、あんたが私のお腹をつままなければこんなことにはならなかったし、挑発するようなこと言わなければ彼女を怒らせなかったわよ」
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