不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「まあ、あまり何度もは遭遇したくないな。心得のない人間が、有段者とは渡り合えない」
「その割、うまく切り抜けたって六川さんが。あ、今度警視庁の制圧術訓練に参加しないかって言ってたわよ。いい線いけるって」
「やめてくれ、六川さんは古巣かもしれないが、新隊員レベルでしごかれる未来しか見えない」
「カッコいいとこ見せてよ〜」

豪の胸に頰を押し付けクスクス笑うと、不意に豪の声のトーンが変わった。

「これから見せるつもりなんだけど」

え、と顔を上げると真剣な豪の顔。真剣なだけじゃない。うっすらピンクに染まった頰、潤んだ瞳、それはたぶん豪の中の欲が高まってるってことで。

「さっきから煽ってるって気づいてないか?」
「そんな……つもりは……」
「可愛い顔で見上げて、身体を押し付けてくる。……誘ってるのは翠だな」

豪が私のウエストをさらりと撫でる。その触れ方の変化に、私だって気づいてしまう。
豪は完全にその気だ。

「豪、怪我してるから……今日は」
「体位に気を付ければ平気だ」

体位……。復唱することすら恥ずかしくて目眩がする。
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