不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
ここで手伝おうかと言えば翠は拒否するに違いない。意地が服を着て歩いてるようなヤツだ。せめてもと、さっき買った缶コーヒーをデスクに置く。
「ナニコレ」
「コーヒー。ひとつ買ったら当たった。やるよ」
わざわざ嘘をつきながら、一階の自販機が当たりつきだったか考え直す。すると翠がコーヒーを俺のデスクの方に押し返してきた。
「いらない」
「砂糖が入ったものは飲まない」
「じゃあ、他の人にあげて」
嫌いな相手からの施しは受けないってことか。俺はかすかに苛々した。
この女のこういうところだ。素直に受け取ってありがとうのひと言でもあれば可愛げがあるものを細かいところまで徹底抗戦なのだ。
「そうか」
俺はコーヒーを手に取り、自身の鞄に放り込んだ。怒れば子どもっぽく見えるだろう。我慢しろ、俺。
翠がこんな調子なのはいつものことで、それはもう十二年もの間変わっていないのだから。
「ナニコレ」
「コーヒー。ひとつ買ったら当たった。やるよ」
わざわざ嘘をつきながら、一階の自販機が当たりつきだったか考え直す。すると翠がコーヒーを俺のデスクの方に押し返してきた。
「いらない」
「砂糖が入ったものは飲まない」
「じゃあ、他の人にあげて」
嫌いな相手からの施しは受けないってことか。俺はかすかに苛々した。
この女のこういうところだ。素直に受け取ってありがとうのひと言でもあれば可愛げがあるものを細かいところまで徹底抗戦なのだ。
「そうか」
俺はコーヒーを手に取り、自身の鞄に放り込んだ。怒れば子どもっぽく見えるだろう。我慢しろ、俺。
翠がこんな調子なのはいつものことで、それはもう十二年もの間変わっていないのだから。