不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「誤字」

長い指がパソコンの液晶を指し、ハッとした。豪が指し示す部分は『思われる』が『おもえあれる』になっている。確かに誤字だ。ありがとうというのも癪で口をもぞもぞさせていると、すぐに次を指摘される。

「こっちは誤用。『後ろ立て』じゃない。『後ろ盾』だ」
「あ……」

指し示された部分に慌ててカーソルを合わせる。急いでタイピングしていたせいだ。

「日本語が不自由とは可哀想だな」

豪はいつもの調子で嫌味を言う。

「雁金さんに頼まれた資料なんだろう?渡す前に俺がチェックしてやろうか?」

半分嫌味、半分親切心なのだろう。でも、そういう態度がムカつくの!私は苛立ちを隠さずに答える。

「急いでいて変換ミスしただけよ。日本語が不自由とは随分な言い草じゃない。言っておくけど、国語の成績は私の方が上でした」
「ほんの二・三度、定期テストで俺に勝っただけだろう?」
「勝率で言うなら、国語と地歴に関しては私が上、英語はイーブンってところよ」
「英語は祭(まつり)がいたからな」

共通の友人の名前を出し、それから豪は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。

「数学と理科、そして選択の第二外国語のフランス語は俺が全勝だったな。そして、総合得点で、翠は俺に勝てたことはない」

む~か~つ~く~!
こういうところが本当に本当に大嫌い!
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