不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
一階で落ち合った豪に事の次第を話すと、大仰にため息をつかれた。
わかってるわよ、私がしくじって顔を見られました。
はいはいはい!ごめんなさい!

「自分が目立つ容姿なのを自覚してないな」
「してるわよ。でも、たぶんパーティーの参加者に見えたと思う」
「会長と若頭に顔を見られている。さらにフロント待機時に鬼澤の視界にも入っているだろ」
「鬼澤は大丈夫だと思うけど」
「男ってもんは美人は無意識に視界に入れてるんだよ」

……褒められた……けど、実質は叱られてる。
そうよ、容姿をこいつに褒められたところでどーってことないんだから。言っちゃえば、中学生くらいの豪の方が百倍可憐で美人だったような気がするし。私なんて……。

「聞いてるのか?」

豪に顔を近づけられ飛びすさってしまった。

「聞いてる。……私はホテルから出るかセミスイートに戻って待機してるわ」
「それが安全だろうな。ひとまず客室に引いていろ。三人が一堂に会していた証拠は間接的だがあるし、俺は会長と若頭がここから出るまで張る。そしたら今日は撤収だ」

豪に遅れを取ったばかりか失態を見せてしまったので仕切られても譲るしかない。
くぅ、私のバカ!
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