不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
エレベーターホールはロビーの近くだけど、少し奥まったところにある。セミスイートのある15階まで直通で行けるエレベーターに向かった。
豪も私がこれ以上動かないよう監視する気なのかエレベーターホールまでついてくる。

「なんにもしないわよ。ちゃんと部屋で待機してるから」
「翠はすぐに俺と張り合おうとするから、今回のことも挽回を考えて動かれては困るんだよ」
「そこまでバカじゃないわよ!」
「どうだか。信用はしてないな」

イライラと睨みつけるのも、もう何万回目よ。
確かに私が悪かったけど、そういう態度はバディにとっていいものかしら?この嫌味野郎~!

次の瞬間だ。エレベーターホールの一番端の一機が空いた。そこから降りてきたのは、例の黒瓦組若頭だ。

心臓が止まりそうになった。
なぜ、ここに?会合真っ只中じゃなかったの?
あの男に私は顔を見られている。というか、ナンパされている。こんなところにうろついているのを見られるのはまずい。あんまり頻回顔を合わせれば、勘のいい人間は疑ってくるだろう。真っ当な筋の人間でなければ余計に。

豪も若頭の存在に気づいて息を詰めている。エレベーターホールに人はまばらだ。

どうしようか迷う暇はなかった。
私は豪の腰に腕を回しスーツの胸に顔を埋めた。酔っているように体重を預けしなだれかかる。
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