不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
その日は取り付く島もない状態で、翠は俺とはろくに話もせずに業務を終え帰っていった。いくら一緒に調査業務をしていると言っても、一番下っ端の俺たちにはやることが多く、仕事が被らないことも結構ある。翠は鬼澤の交友関係の裏付けを取っているけれど、今日にいたっては俺にろくに報告もせずに外出しようとする。ひとりでどこへ行く気だ。無茶なことをするつもりじゃないだろうな。
「おい、翠」
見かねて声をかけると素っ気ない返事がきた。
「鬼澤名義の土地があるから登記簿を見てくるだけよ」
「それって、群馬県だろう。今日ぱっとこれから行くには遠いし、出張届を出してないぞ」
「今日中に戻るから大丈夫」
翠は頑なだ。俺も語調が強くなる。
「やめておけ。地元の法務局だぞ。鬼澤が職員に手を回してあれば、俺たちが嗅ぎ回っているのがバレる。手順を踏んで、別ルートから取り寄せよう」
一応俺たちは特務局だ。一般人の正規手続き以外でも、個人の情報は入手できる手立てがある。限定的だから乱用はできないけれど。
翠はむっとしていながらも、理解はしたようで、どさりと鞄をデスクに置き直した。
しかしどうしたものか。翠が不貞腐れている原因は、やはり昨日の俺と風間さんの一件だよな。俺が他の女子と付き合おうが何しようが翠は無関心を貫いてきた。その翠が、風間さんと俺の親しげな会話苛立つだなんて。
「おい、翠」
見かねて声をかけると素っ気ない返事がきた。
「鬼澤名義の土地があるから登記簿を見てくるだけよ」
「それって、群馬県だろう。今日ぱっとこれから行くには遠いし、出張届を出してないぞ」
「今日中に戻るから大丈夫」
翠は頑なだ。俺も語調が強くなる。
「やめておけ。地元の法務局だぞ。鬼澤が職員に手を回してあれば、俺たちが嗅ぎ回っているのがバレる。手順を踏んで、別ルートから取り寄せよう」
一応俺たちは特務局だ。一般人の正規手続き以外でも、個人の情報は入手できる手立てがある。限定的だから乱用はできないけれど。
翠はむっとしていながらも、理解はしたようで、どさりと鞄をデスクに置き直した。
しかしどうしたものか。翠が不貞腐れている原因は、やはり昨日の俺と風間さんの一件だよな。俺が他の女子と付き合おうが何しようが翠は無関心を貫いてきた。その翠が、風間さんと俺の親しげな会話苛立つだなんて。