不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
豪が風間さんと食事に行く。
もしかしたら、そのまま付き合うかもしれない。

そのことが私の頭をもたげている。こうなるとすこぶる気分が悪いもので、豪との喧嘩も相まってオフィスにいるのがことさらしんどい。苛立って仕事をするものだから、ちょっとしたミスが多い。情けない。仕事にプライベートが影響しているなんて。

豪は風間さんと食事に行くのだろうか。いや、きっとあそこまで風間さんが自信満々に言うってことは、豪から誘ったのだろう。そして、ふたりはその日中にホテルでベッドインだ。
風間さんは職場でおおっぴらに豪と付き合っていることを吹聴し、やがて私と豪の結婚が本格的になれば『身を引いてあげた』といい女をきどるのだ。

うん、私、あの人嫌い。想像でここまで悪感情を抱いているなら、もう隠すこともないでしょ。嫌い嫌い、ああいう女嫌い。

そして、見た目ばっかり派手ないい女きどりを選ぶ豪はもっと嫌い。大嫌い。

一方で私は自分自身にも苛立ちを覚えていた。豪のことで情緒不安定になるのはどうしてだろう。
豪のことは嫌い。だけど、なまじ婚約者の立場にいるからまったくの無関心ではいられない。そして、豪に『恋愛は自由』と言ったのはそもそも私なのだ。

『どうせ、いつか結婚しなきゃならないんでしょ?私たち。それなら、結婚までの恋愛はお互い干渉しない方がいいんじゃない?』

なんて、おとなびた言葉を吐く中学三年生がどこにいるのよ。
ここにいた!私だ!私のばーか!

自分で恋愛自由宣言しておいて、豪の挙動にやきもきしてるなんて馬鹿以外の何物でもない。
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