不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
あの頃の私は思ったのだ。
豪はモテる。そして、私に興味はない。それなら、婚約者だからと縛りつけることはいけないと思ったのだ。
『お互いに干渉しない』と言ったものの、私個人は恋愛するつもりは毛頭なかったし、豪ひとりが自由になれればいいと思ってのことだ。
自分で決めておいて、豪に彼女ができた途端ショックを受けたのは誰だったっけ。
私よ、私。ほんと、私のばーか!

高校に入ってすぐに可愛い彼女を連れて歩いている豪は、目をそむけたくなるほどつらかった。私はこの時、まだ豪に未練があったのだ。王子様みたいな婚約者は私を選ばなかった。そのことに深く傷ついた。私があんなことを言わなければ、豪は彼女なんか作らなかったかと、自分の言葉に後悔した。

しかし、彼女が三人目、四人目となってくると、私もだんだん慣れてきた。
豪は数ヶ月で彼女を変える。ええ?嘘でしょ?付き合うってそんなに簡単なものなの?あっという間に別れちゃえるものなの?
きっと、あいつは人間的に問題があるんだ。だから彼女たちはすぐに豪を捨てるのだ。私はそう納得をしていた。

だから、今の感情は完全なる想定外。

久し振りに豪に彼女候補ができたら、高校時代に気持ちが戻ってしまうなんて。
そうだ、ここ最近豪が誰とも付き合っていなかったから、驚いただけ。もしかしたら、裏では女の子をとっかえひっかえしてたかもしれないしね。
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