不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
結局、豪とろくに話せないまま金曜はやってきてしまった。定時前、すでに職場にはほとんど人がいない。たまたま何名か調査業務でいない。局長は午後いっぱい会議だ。定時を過ぎると、居残っていた先輩方も金曜くらいは、と定時帰宅していった。
「朝比奈も、あまり根を詰めるなよ」
「はい、なるべく早く帰ります。お疲れ様です」
顔をあげ、見送りながら答える。豪は午後ずっといない。私たちが手掛けている鬼澤の件ではなく、局長から直々に頼まれた案件のため外へ出ている。
豪はそのまま風間さんと食事に行くのだろうか。私は止める術もないまま、こうしてここで仕事を片付けている。
止める権利がないという気持ちはいまだにある。豪が誰かと食事にいったり、抱き合ったりすることを止めるのは恋人の権利だ。でも、あんなふうに険悪なやりとりで、豪の“浮気”の背中を押すのは違う。局長も言っていた。話し合うべきだと。カッカせずに、一歩引いて大人として話し合った方がいいのは確かだ。
それなのにぐずぐずきっかけを見いだせないでいるうちに今日だ。
情けない。ずばっと決めて、さくっと行動するのが私なのに、どうして豪相手にそれができないんだろう。
私は、豪が風間さんと食事に行くのが面白くない。それは認めるべきなんだと思う。
しかも、風間さんが嫌い、という理由じゃない。豪が私以外の女性と親密になるのが嫌なのだ。豪のことなんか好きでもなんでもないのに。
「朝比奈も、あまり根を詰めるなよ」
「はい、なるべく早く帰ります。お疲れ様です」
顔をあげ、見送りながら答える。豪は午後ずっといない。私たちが手掛けている鬼澤の件ではなく、局長から直々に頼まれた案件のため外へ出ている。
豪はそのまま風間さんと食事に行くのだろうか。私は止める術もないまま、こうしてここで仕事を片付けている。
止める権利がないという気持ちはいまだにある。豪が誰かと食事にいったり、抱き合ったりすることを止めるのは恋人の権利だ。でも、あんなふうに険悪なやりとりで、豪の“浮気”の背中を押すのは違う。局長も言っていた。話し合うべきだと。カッカせずに、一歩引いて大人として話し合った方がいいのは確かだ。
それなのにぐずぐずきっかけを見いだせないでいるうちに今日だ。
情けない。ずばっと決めて、さくっと行動するのが私なのに、どうして豪相手にそれができないんだろう。
私は、豪が風間さんと食事に行くのが面白くない。それは認めるべきなんだと思う。
しかも、風間さんが嫌い、という理由じゃない。豪が私以外の女性と親密になるのが嫌なのだ。豪のことなんか好きでもなんでもないのに。