不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
この矛盾した感情が、過去の初恋の名残なのか、婚約者のプライドのせいなのかはわからない。
私は豪とどうなりたいのだろう。他の人と付き合わないで。私はあなたの婚約者なんだから。そう言いきれる自信はない。
だって、私のきつい性格も豪に張り合ってきた過去も消せないもの。豪に好かれる要素なんか……別に好かれたいわけじゃないけれど。
そう、円満にやりたいの。それだけよ。円満に夫婦になりたいの。どうせ逃げられないんだから。それなら、局長の言う通り、私が折れてでも豪に優しくすべきなのかな。
時計を見る。気づけば19時過ぎだ。待ち合わせなら、そろそろかしら。豪の鞄はないし、やっぱり直帰なのかな。
がたんとドアが開き、弾かれたように顔を向けると、そこには会議から戻ってきた局長がいた。
「朝比奈お疲れ様。まだ終わらないか?」
「お疲れ様です。ええと……あと少しです」
本当はある程度終わっていた。雁金さんの手伝いでまとめていた資料は仕上がり、鬼澤の件は最後に豪と打ち合わせを終えれば、第一弾の報告書があげられる。
いつ帰ってもいいのに、ひとり帰るのは落ち着かなくてオフィスにいるなんて。
「そうか、気を付けて帰りなさいよ。俺は先に上がっちゃうけど。奧さんと約束があるんだよね」
「そうなんですね。それなら急いで帰らないと!」
「大丈夫、大丈夫。19時半にここの近所だから」
局長はパソコンを落とし、鞄を持つと早々に立ち上がる。私のデスクにやってきて、ことんと何かを置いた。
「はい、これあげる」
小さなボックスに入っているのはお菓子だろうか。
私は豪とどうなりたいのだろう。他の人と付き合わないで。私はあなたの婚約者なんだから。そう言いきれる自信はない。
だって、私のきつい性格も豪に張り合ってきた過去も消せないもの。豪に好かれる要素なんか……別に好かれたいわけじゃないけれど。
そう、円満にやりたいの。それだけよ。円満に夫婦になりたいの。どうせ逃げられないんだから。それなら、局長の言う通り、私が折れてでも豪に優しくすべきなのかな。
時計を見る。気づけば19時過ぎだ。待ち合わせなら、そろそろかしら。豪の鞄はないし、やっぱり直帰なのかな。
がたんとドアが開き、弾かれたように顔を向けると、そこには会議から戻ってきた局長がいた。
「朝比奈お疲れ様。まだ終わらないか?」
「お疲れ様です。ええと……あと少しです」
本当はある程度終わっていた。雁金さんの手伝いでまとめていた資料は仕上がり、鬼澤の件は最後に豪と打ち合わせを終えれば、第一弾の報告書があげられる。
いつ帰ってもいいのに、ひとり帰るのは落ち着かなくてオフィスにいるなんて。
「そうか、気を付けて帰りなさいよ。俺は先に上がっちゃうけど。奧さんと約束があるんだよね」
「そうなんですね。それなら急いで帰らないと!」
「大丈夫、大丈夫。19時半にここの近所だから」
局長はパソコンを落とし、鞄を持つと早々に立ち上がる。私のデスクにやってきて、ことんと何かを置いた。
「はい、これあげる」
小さなボックスに入っているのはお菓子だろうか。